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[コメント]
 前回に引き続き、I'veサウンド「こなたよりかなたまで」OP曲です。メッセージソングとして、この曲もすごいパワーがありますよね☆

 なお、PCゲーム新装パッケージ版のImaginary affair絵が印象的でしたので、それに沿ったお話にしてみました。一人称や言い回しなど、本編とのズレがあるかもですが、目をつぶっていただければ幸いです(汗)。

Collective
Collective

[収録]
Collective
こなたよりかなたまで(PC)

[Song]
KOTOKO

[Lyrics]
KOTOKO

[試聴]
F&C・FC01ホームページ

お願い
画像・文章などの無断転載を一切禁止致します。

書き物(目次)>>
Imaginary affair

「参ったな……」

校舎の玄関口。
遥彼方(はるか かなた)は空を見上げ、途方に暮れていた。

ねずみ色の雲は、飽きることなく雨を吐き出している。

朝の具合からして、降ることなど誰が予想できよう。
現に天気予報ですら、降水確率はたったの10%だった。

しかし、このまま佇んでいても仕方ない。
今日は昼から病院なのだから。

「彼方……くん?」

走り出そうとした彼方の肩を、佐倉の声が掴んだ。
あるいは気付かないフリをするべきだったのかもしれない。

耕介に佐倉を委ねたことに安心していたからか。
それとも雨に濡れることを無意識に拒んだからか。

とにかく、彼方は足を止めてしまっていた。

「どこ行くの? まだ授業、終わってないよ?」

内心、舌打ちをした。

それでも次に振り向いた彼方の表情にはいつも通りの落ち着き。
そして、笑顔が張り付いている。

対照的に佐倉は笑っていなかった。

それはそうだろう。
クリスと恋人のフリを始めてから、彼女は心から笑うことを放棄している。
そもそも真面目な佐倉が自称・サボリを笑って許してくれるはずもないのだ。

「友達に呼び出されてね。困ったヤツだよ、ホント」
「……」
「すぐに来いって言われてるんだ。先生には内緒にしておいてくれ」

それでも演技に徹する。
顔の前で両手を合わせて、お願いしてみた。

念のため説明するが、あくまで表向きは悪い仲間と付き合いがあることにしているだけ。
もちろん、先生たちには了解をもらっている。

「はいこれ」
「?」

顔をあげると佐倉の手には折りたたみの傘が乗っていた。
淡いピンク色で花柄の、いかにも女の子女の子したもの。

「傘、忘れたんでしょ。使って」
「サンキュ……」

久しぶりに佐倉の笑顔を見た気がした。
正直、嬉しかった。

この雨に簡単に流されてしまいそうなほど、儚いものだったとしても、だ。

「気をつけてね」

遠ざかる足音を聞き届けると、傘をさす。
彼方の頬は知らぬ間に雨ではない液体で濡れていた。



いずみと優に送り出され、彼方は家路についていた。
雨はすっかりやみ、小さな水たまりは黄昏を映し出している。

対照的に、手にあるのは佐倉に貸してもらった傘と自分のカバン。
この長すぎる坂ではこれらでさえ、重く感じられる。
だからと言って、手放すはずはない。

「はぁーはぁあー」

それにしても、日に日に弱ってゆくこの体だ。
皮膚の下に体積のない重りを注入されているようでもある。
今の生活を続けられるのも、今日、先生に言われた通りに長くはないのだろう。

「くっ……」

西日に当てられ、ついには耐え切れなくなり、電柱の側でしゃがみこむ。
目の前の景色が大きく揺らいだ。



「……お〜い、彼方ぁ〜」

背中に聞き慣れた声。
汗をぬぐい、顔をあげる。
ようやく目の焦点が合うと見知った顔があった。

クリス、耕介、佐倉に……九重さんまで?

「だらしないのぉ。お主、一応は男じゃろうが」
「ほら、立てって」
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜あれ?」

さっきまでの疲労感と倦怠感はどこへやら。
体が軽い。

「どうしたの?」
「……いや」

なぜかニコニコ顔で問いかけてくる佐倉。
ここ最近のわだかまりなど、全く感じていないようだった。
いぶかしく思いながらも、差し伸べられる手につかまり、立ち上がる。

「おぶってくれっ、彼方!!」
「わふっ」

思わず犬のような声を上げてしまう。
クリスが豊満な胸を惜しげもなく当ててくることにも狼狽。

途端にふくれる佐倉。

「む〜」
「ちょ、クリス重いって」
「なに〜!? ふざけたことを抜かすのはこの口か? ほれほれ」
「や、やめふぉ〜」
「だっはっはっは」
「こうふけもわらっへないへ、なんふぉかしふぉ(耕介も笑ってないで、なんとかしろ)」
「よーし、あの電柱まで歩いたら、次は佐倉ちゃんの番だぞ☆」
「え? う、うん!! 絶対だよ、彼方くん」

(くいくい)

今まで傍観していた九重さんが耕介を引っ張る。
そして耳元で何かを囁いた。
もうそれくらいで、とたしなめてくれているのだろう。

「佐倉ちゃんの次は九重さん、ということでヨロシク!!」

……全然違った。
むしろ、増長している。


こなたよりかなたまで パッケージ新装版



「もっとゆっくり歩いても良いのじゃぞ? 彼方」
「だーめ!! わたしも早くおんぶしてもらいたいんだから」
「ま、とにかくがんばれ〜っと」
「ったく、他人事だと思って」
「……ふふ」


僕は気付いていた。
そう、これはもう一つの世界の話。

本当の僕はたぶん、坂の途中で気絶してしまっているんだ。
だから、これは夢。
いつ醒めてもおかしくない、幸せな夢。

その証拠に体がこんなにも軽い。
急な坂を上ってるのに、交代して佐倉をおぶってるのに、息切れの一つもしないんだから。


「ようし、九重さんの次は耕介、お前もおぶってやる!!」
「な、なんだぁ? 男にも興味があるのか?」
「ああ。耕介も佐倉もクリスも九重さんも、いずみちゃんも優ちゃんも全員大好きだからな!!」


もし、辿り着く先が「死」という断崖絶壁だとしても。
誰も「それ」から逃れることなんて、出来やしないんだ。

だったら。

だったらその日が来るまで、大事なものを守り続ければいい。
愚直に、そして不器用にでも、精一杯に愛せばいい。

心は誰にも縛られない。
縛り付けるものは、いつだって自分自身だから。

仲間がいる。
自由がある。

願わくば、目を醒ましてもこの幸せが続きますように――――。



事実、彼方は坂の途中で意識を失っていた。
発見した耕介とクリスが病院に連絡。

彼方が目を醒ますのは2日後。
その間、眠りながらもずっと笑みを浮かべていたという。


[他のKOTOKOの曲]

Face of Fact

・Face of Fact
 (アニメバージョン)
・(未定)
・(未定)
・(未定)


421 -a will−

・421−a will−
・秋爽(アキ)
・421−a will−
(オフボーカルバージョン)
・秋爽(アキ)
(オフボーカルバージョン)

硝子の靡風

RETRIEVE
・Wing my Way
・覚えてていいよ
・ため息クローバー
・Meconopsis
・ささくれ
・琥珀
・Re-sublimity
・硝子の靡風(かぜ)
・421-a will-
・Free Angels
・β-粘土の惑星(ほし)
・赤い玉,青い玉


Re-sublimity

・Re-sublimity
・agony
・Suppuration-core-
・Re-sublimity
 (オリジナルカラオケ)
・agony
 (オリジナルカラオケ)

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