[コメント] |
前回に引き続き、I'veサウンドで「こなたよりかなたまで」OP曲です。メッセージソングとして、この曲もすごいパワーがありますよね☆
なお、PCゲーム新装パッケージ版のImaginary affair絵が印象的でしたので、それに沿ったお話にしてみました。一人称や言い回しなど、本編とのズレがあるかもですが、目をつぶっていただければ幸いです(汗)。
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Collective
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書き物(目次)>>
Imaginary affair
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「参ったな……」
校舎の玄関口。
遥彼方(はるか かなた)は空を見上げ、途方に暮れていた。
ねずみ色の雲は、飽きることなく雨を吐き出している。
朝の具合からして、降ることなど誰が予想できよう。
現に天気予報ですら、降水確率はたったの10%だった。
しかし、このまま佇んでいても仕方ない。
今日は昼から病院なのだから。
「彼方……くん?」
走り出そうとした彼方の肩を、佐倉の声が掴んだ。
あるいは気付かないフリをするべきだったのかもしれない。
耕介に佐倉を委ねたことに安心していたからか。
それとも雨に濡れることを無意識に拒んだからか。
とにかく、彼方は足を止めてしまっていた。
「どこ行くの? まだ授業、終わってないよ?」
内心、舌打ちをした。
それでも次に振り向いた彼方の表情にはいつも通りの落ち着き。
そして、笑顔が張り付いている。
対照的に佐倉は笑っていなかった。
それはそうだろう。
クリスと恋人のフリを始めてから、彼女は心から笑うことを放棄している。
そもそも真面目な佐倉が自称・サボリを笑って許してくれるはずもないのだ。
「友達に呼び出されてね。困ったヤツだよ、ホント」
「……」
「すぐに来いって言われてるんだ。先生には内緒にしておいてくれ」
それでも演技に徹する。
顔の前で両手を合わせて、お願いしてみた。
念のため説明するが、あくまで表向きは悪い仲間と付き合いがあることにしているだけ。
もちろん、先生たちには了解をもらっている。
「はいこれ」
「?」
顔をあげると佐倉の手には折りたたみの傘が乗っていた。
淡いピンク色で花柄の、いかにも女の子女の子したもの。
「傘、忘れたんでしょ。使って」
「サンキュ……」
久しぶりに佐倉の笑顔を見た気がした。
正直、嬉しかった。
この雨に簡単に流されてしまいそうなほど、儚いものだったとしても、だ。
「気をつけてね」
遠ざかる足音を聞き届けると、傘をさす。
彼方の頬は知らぬ間に雨ではない液体で濡れていた。
いずみと優に送り出され、彼方は家路についていた。
雨はすっかりやみ、小さな水たまりは黄昏を映し出している。
対照的に、手にあるのは佐倉に貸してもらった傘と自分のカバン。
この長すぎる坂ではこれらでさえ、重く感じられる。
だからと言って、手放すはずはない。
「はぁーはぁあー」
それにしても、日に日に弱ってゆくこの体だ。
皮膚の下に体積のない重りを注入されているようでもある。
今の生活を続けられるのも、今日、先生に言われた通りに長くはないのだろう。
「くっ……」
西日に当てられ、ついには耐え切れなくなり、電柱の側でしゃがみこむ。
目の前の景色が大きく揺らいだ。
「……お〜い、彼方ぁ〜」
背中に聞き慣れた声。
汗をぬぐい、顔をあげる。
ようやく目の焦点が合うと見知った顔があった。
クリス、耕介、佐倉に……九重さんまで?
「だらしないのぉ。お主、一応は男じゃろうが」
「ほら、立てって」
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜あれ?」
さっきまでの疲労感と倦怠感はどこへやら。
体が軽い。
「どうしたの?」
「……いや」
なぜかニコニコ顔で問いかけてくる佐倉。
ここ最近のわだかまりなど、全く感じていないようだった。
いぶかしく思いながらも、差し伸べられる手につかまり、立ち上がる。
「おぶってくれっ、彼方!!」
「わふっ」
思わず犬のような声を上げてしまう。
クリスが豊満な胸を惜しげもなく当ててくることにも狼狽。
途端にふくれる佐倉。
「む〜」
「ちょ、クリス重いって」
「なに〜!? ふざけたことを抜かすのはこの口か? ほれほれ」
「や、やめふぉ〜」
「だっはっはっは」
「こうふけもわらっへないへ、なんふぉかしふぉ(耕介も笑ってないで、なんとかしろ)」
「よーし、あの電柱まで歩いたら、次は佐倉ちゃんの番だぞ☆」
「え? う、うん!! 絶対だよ、彼方くん」
(くいくい)
今まで傍観していた九重さんが耕介を引っ張る。
そして耳元で何かを囁いた。
もうそれくらいで、とたしなめてくれているのだろう。
「佐倉ちゃんの次は九重さん、ということでヨロシク!!」
……全然違った。
むしろ、増長している。

「もっとゆっくり歩いても良いのじゃぞ? 彼方」
「だーめ!! わたしも早くおんぶしてもらいたいんだから」
「ま、とにかくがんばれ〜っと」
「ったく、他人事だと思って」
「……ふふ」
僕は気付いていた。
そう、これはもう一つの世界の話。
本当の僕はたぶん、坂の途中で気絶してしまっているんだ。
だから、これは夢。
いつ醒めてもおかしくない、幸せな夢。
その証拠に体がこんなにも軽い。
急な坂を上ってるのに、交代して佐倉をおぶってるのに、息切れの一つもしないんだから。
「ようし、九重さんの次は耕介、お前もおぶってやる!!」
「な、なんだぁ? 男にも興味があるのか?」
「ああ。耕介も佐倉もクリスも九重さんも、いずみちゃんも優ちゃんも全員大好きだからな!!」
もし、辿り着く先が「死」という断崖絶壁だとしても。
誰も「それ」から逃れることなんて、出来やしないんだ。
だったら。
だったらその日が来るまで、大事なものを守り続ければいい。
愚直に、そして不器用にでも、精一杯に愛せばいい。
心は誰にも縛られない。
縛り付けるものは、いつだって自分自身だから。
仲間がいる。
自由がある。
願わくば、目を醒ましてもこの幸せが続きますように――――。
事実、彼方は坂の途中で意識を失っていた。
発見した耕介とクリスが病院に連絡。
彼方が目を醒ますのは2日後。
その間、眠りながらもずっと笑みを浮かべていたという。
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